国産早生樹連絡会

見えてきた時間軸革命への道

 巻頭言を頼まれ,何かを書こうかと思い,「そうだ。2月に行った九州経済連合会主催で,私がコーデイネーターを仰せつかり,パネリストに麻生泰会長,水戸岡鋭治氏,福岡市長(都合により当日は副市長が参加)を迎え,福岡市の木材利用に関するシンポジウムが行われ,かなり盛り上がったので,その話を書 こう」と,原稿を仕上げた。しかし,「国産早生樹じゃないのか!」と,関係者から言われそうなので, 格好いいタイトルも思いついたことから書き換えることにした。

 21世紀に入った頃でしょうか,なぜ日本に短伐期ものがないのか?それまでスギ品種・クローン,ヒノキ,カラマツを対象に材質の研究を行いながらも本当に成長の早い樹はないのか探した。私が考えつくようなことは誰かが考えついているもので,日田の林家の神川先生は以前から実験的に広葉樹を植栽し,育てたユリノキ,チャンチンモドキ,ケンポナシに会わせてくれた。さらにこの業界では有名な観光地? になった熊木県の展示林では,枝打ちで樹幹が通直になったセンダン,勝手に通直になるチャンチンモドキ.実験中だった芽かきセンダンにも会わせてくれた。以前から研究室では国産ユーカリやユリノキの材 質研究を行っていたが,枝打ちで通直になった成長の早いセンダンを研究したのが,今日に至る国産早生樹の始まりだった。また,ある人から国産早生樹研究について「山林(2005)に書いて」と頼まれ,その 9年後に林野庁のある方がそれを読み,話を聞きに来られた。振り返って見ると,いろんなことが繋がってくる。木材を積極的に利用する時代になり,伐採跡地に何を植えるか?地域で人工林のデザインを考える時が来た。最近の私の口癖は「自分が植えて自分が収穫する」「自分が植えて子が収穫する」「自分が植えて孫が収穫する」というものでそのような木質資源をデザインする時代になってほしい。国産早生広葉樹やコウヨウザンもその候補のlつとして注目され,「国産早生広葉樹の話を開きたい」と招かれ,西は宮崎から東は石川まで講演させていただいた。

 今の課題は何か?この研究に取り組んだ頃の私の関心事は国産早生広葉樹が使えるかどうかの1点であった。最初の委託事業は全天連と行った。福岡に家具の街大川があることから,家具や内装インテリアに使うことにし,木材のことをよく知らないインテリア関係者の評価が知りたくてIFFTで展示した。結果は我々のグループに自信と確信をもたらした。国節早生樹は使える!と。ただ,lつを乗り越えると必ず壁が立ちはだかる。早生広葉樹を気に人ってくれた方が私に「年間何m3出せるの?」と尋ねた。使えることはわかった。だが,資源がないことが問題であり,育種とエンドユーザーの情報共有ができる場が必要である。現在,全天連と林木育種センターという異色の組み合わせで将来の苗木生産に向けた事業を行っており,化学反応が起こりつつある。会議では水と油がなぜか混ざりつつある。どういう木が高価なのか?こんな木は創れるのか?。・・・そう,これがフィードバック型林業である。

 大川ではSOUSElというプロジェクト名でセンダンを生かした家具が商品化されている。センダンの植林も始まった。また,保育園児と一緒に植栽し,15年後,大人になったら伐採して家具を製作し,保育園で使ってもらう。このようにあちこちで知恵を絞った素睛らしい取り組みが広がりつつある。 当面は15〜20年伐期でセンダン林業を確立し,時間軸革命を起こします。これを受け,九州支部では 国産早生樹連絡会を発足させます。「何がどこまでわかっているのか」など,情報共有の場を作ってくれとの要望に応えます。課題は資源量を増やすこと,森林施業の確立です。センダンに続く樹種の発掘も不可欠です。興味がある方は九州支部へ入会希望とお問い合わせください。

                                    (木材工業Vol.74. No.7. pp.259 (2019))